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『天久鷹央の推理カルテIV: 悲恋のシンドローム 』 著:知念 実希人

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知念実希人さんの『推理カルテ』シリーズの最新作となります。

3作の連作集と1作の長編を経て、天久鷹央シリーズ連作集の第4作目が刊行されています。

このシリーズは、「医療」をテーマにしたミステリー小説です。

医療をテーマにすると、医療過誤や医療裁判、臓器売買などという血なまぐさい題材が選択されがちで、比較的医業の闇を暴くスタイルの作品が多いなか、文庫のレーベルや透明感のある表紙からも分かるように、非常に軽い切り口で医療を扱った作風です。

爽やかな読後感。

 主人公は、若手医師。
 どうミステリーに繋げていくのかというと、彼の上司が非常に特殊な人物なのです。

 天久鷹央。
 彼女は、二十代で総合病院の副院長を務め、『統括診断科』に属し、病名不詳な患者さんや、厄介な患者さんを専門に診察しています。その厄介な患者さんが連れてくるのが、病気だけではなく『謎』だったりして、天久鷹央は『謎』が大好物だったりするのです。

 探偵助手もののミステリーとしてはオーソドックスな設定ですが、舞台が病院なので起こる事件も比較的真新しい切り口のものが多く、新鮮。

 普通のミステリー小説では、過去の名作の類似手法で筋道に推測が立つような作品もありますが、医療現場でも珍しいような症状を題材にされると、読者側は想像に難いので、なんというか、少しアンフェアな感情を抱きつつも、先の展開が気になってくるという居心地の悪さに包まれます。

 医療をテーマにしただけあって深く考えさせられる重い話もあり、本作の『瞬間移動した女』は、性を扱った繊細かつ重厚なものでした。ミステリーとしての完成度も高く、人気が高いのもうなずけます。

 天才だけど欠点の多い鷹央と、嫌々ながら鷹央の謎好きに巻き込まれていく主人公。キャラクター的としても魅力的で、長く続いて欲しいシリーズの一つです。

オススメ度 ☆☆☆

ラノベ

一言感想『ソードアート・オンライン(17)アリシゼーション・アウェイクニング』 著:川原 礫

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 前作からまた時間が空きまして、ストーリーをうろ覚えていたので、あらためてエクスプローディングから読み直すという一粒で二度おいしい感じのソードアートオンライン最新巻アウェイクニングが刊行されています。

 前作で、相変わらずキリトは抜け殻の状態のまま、仮想空間では人界軍対暗黒軍のアンダーワールド大戦が開戦し、整合騎士たちの活躍、そして女神ステイシアのアカウントでログインしたアスナが人界軍を間一髪で救うという見せ場を演じました。

一方、リアルワールドでは高度AIであるALICEを奪おうとするアメリカ人たちと、自衛隊のドンパチが始まり、米人側が一般の米人ネットユーザーを、暗黒軍側のプレイヤーとして召還しようと画策しているところ。
さて人界軍側の援護射撃は誰が・・・・?

というところで、高度AIであるユイが密やかに活躍し、致命的な状態に陥るのを回避するという展開でした。(何を言っているのかわかりませんが、エクスプローディングはここまで。)

本作では大戦がいよいよ大詰めとなり、人界側にはコンバートしたシノン、リーファが参戦。
リズベットの説得に応じた日本人プレイヤーも続々と参戦します。

一方暗黒軍側は、米人ネットユーザーだけではなく中国、韓国人ユーザーを扇動し、何万ものユーザーをログインさせ、人界側は窮地に立たされることになるのです。

そろそろキリトも目覚めていい頃では・・・・といったところで本作は終了。

またも!キリトの覚醒はおあずけです。

 

本作は助走回ということで、大きな事件はなく粛々と物語が進行しました。
戦闘シーンでは、整合騎士長ベルクーリ、シノン、リーファらの見せ場はあるものの、キリト覚醒への演出というか布石のようなもの。

作者は本作でキリトを覚醒させたかったようですが、そこは大人の事情のよう。(本が分厚くなるらしいです。)

少しずつクライマックスに近づいてはいますが、盛り上がりに欠けてしまうのはアリス編で主人公を張っていたユージオが死に、キリトが心神喪失状態で主人公不在の影響がかなり大きいものと思います。

思い入れ始めたあたりでサブキャラクターも死んでいったりしますしね。戦争というのは、中々描くほうも難しいということでしょう。

ともあれ数冊にもわたり主人公不在のまま進められてきたアリシゼーション編。
次回、ようやく主人公の動く姿が見られそうです。

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『海の翼 エルトゥールル号の奇蹟』 著:秋月 達郎

seawing

日本とトルコの関係が友好であることは皆さんご存知かと思うのですが、そのきっかけとなった事件については、存じないのではないかと思います。

この作品は、その事件を描いたもので、日本人たちが過去に施した恩に報いるために、犠牲を払ってでもその恩を返そうとしたトルコ人たちの物語です。

「エルトゥールル号」
紀伊半島沖で転覆したトルコの船です。この転覆事件を経て、両国にはとても堅い絆が生まれることになります。

イラン・イラク戦争の最中、フセイン大統領はイラン領空の航空機を無差別に攻撃することを宣言しました。タイムリミットは8時間。日本政府は救援機を出せないし、他の各国も自国民をイランから脱出させるため、航空便に空席などないような状況。
そんな中、ある国が自国民を顧みず日本人を航空機へ搭乗させる決断をした、という話です。

なぜ、トルコ人たちはこんなにも恩義を感じてくれているのか。
エルトゥールル号遭難事件の事実を基に構成し、大河ドラマ仕立てで、小説化したものが本作です。

ストーリーはおおむね事実であろうと思いますので言うに及びませんが、構成や登場人物の面から見ても、とても面白く、感動的なエンターテインメントに仕上がっています。
同じように、日本人が海外で救助されたからといって、トルコ人と同様に子孫へ語り継ぎ、恩を忘れないとすることができるでしょうか。

多くは語りませんので、ぜひ読んで頂きたい。
ものすごく、感慨深く、熱量を感じた一冊です。

オススメ度 ☆☆☆☆

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『弁護側の証人』 著:小泉 喜美子

弁護側の証人

 本屋を訪れると平積みの作品があります。その本屋が売りたい本、今売れている本なのでしょう。そこにこの本は積まれていました。

解説、道尾秀介。
読むしかないと思い手に取りました。

本作を読みながら驚いたのは、刊行が昭和30年代であるということ。戦後10数年といったところなので、まだまだ物資や金銭的にもそれほど裕福な生活を送れていたとは思えません。

本作は、そんな環境の中でかかれたサスペンス小説なのです。

お金持ちのお屋敷に嫁いだ元ヌードダンサー、ミミイ・ローイ。
本作は、会社社長である彼女の義父が殺害されるという事件に、彼女が巻き込まれていくというアウトライン。
その父と関係がうまくいっていなかった夫、遺産を狙う義姉、顧問弁護士、かかりつけ医師など、実に怪しげなキャラクターたちが多く登場します。

そんな中、元ヌードダンサーなどという、どこの馬の骨とも分からぬ人物が若当主の妻として嫁いできたのですから、家族親族はもちろんのこと、屋敷勤めの運転手や家事手伝いも、心中穏やかではありません。そういった背景の中、殺人事件が起きてしまうのです。

巧妙なトリックや斬新な動機が語られるわけではありませんが、とある”仕掛け”が施されています。
昭和30年代からこういった仕掛けを使ったミステリーが愛好されていたかと思うと、ニワカミステリーファンとしては意外な気持ちです。
文体が古いので少し読みにくさを感じるかもしれません。
我慢して最後まで読むと、作者の洗練された巧みな罠にからめ取られていたことに気がつくでしょう。

現代に読むと、さほど真新しくもない、いちミステリーかもしれませんが、古き良き名作には違いありません。

オススメ度 ☆☆☆

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『子どもの王様』 著:殊能 将之

おうさま

 殊能将之の『子どもの王様』を読みました。2013年に著者は亡くなりましたが、『ハサミ男』や『美濃牛』など、本格と呼ばれるジャンルの斜め上を行くようなスタイルで、ミステリーを執筆してきた作家のひとりです。

本書、『子どもの王様』は、そんなミステリーとはまた一味違った著者の幼い頃の実際の体験をもとに描かれたファンタジックなミステリーです。

主人公は小学生。
集団登校や放課後の遊び、ごみ出しにうるさいおばさん。実に郷愁を誘う世界観です。

まだまだ幼い少年である彼らは、小うるさいオバサンが魔女に見えたり、戦隊ヒーローに憧れたり、”リコン”の意味が今ひとつ理解できなかったりと、何だか読者の脳みそを抉るようなミステリーを描いてきた著者らしくない、物腰柔らかな読み味の物語が続いていきます。

ひときわ異彩を放つのは『子どもの王様』。
主人公の友達がおそれる、この王様は不気味な存在として描かれ、自分たちに仇なす敵としての立ち位置で終始、主人公の心を乱してゆくのです。
(読者からすれば、この「子どもの王様」がどのような存在かは一目瞭然なのですが。)

物語に登場する、”看板”を使ったトリックは流石といったところですが、物語には深く関わらない遊びのようなもの。それでも、このノスタルジックな世界観の中でも、一瞬の鋭利な輝きを感じさせるのは、著者ならではの技術です。

ワーグナーのオペラがオマージュされているようですが、私は見ていないので何とも。見ていればより深い殊能将之の世界へ潜り込むことができるのでしょうか。
・・・純粋なミステリーを楽しみたい方には、少し物足りないかもしれませんね。

オススメ度 ☆☆

ラノベ

一言感想『ソードアート・オンライン プログレッシブ(4)』 著:川原 礫

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 プログレッシブ(漸進的な)と銘打たれたこの作品は、本編ソードアート・オンラインを1フロアずつ進めていく長大なシリーズです。

ソードアート・オンラインとは、中高生を中心に、大ヒット中のライトノベル。

ナーヴギアと呼ばれる機器を装着することによって、オンラインゲーム世界の中にもう一人の自分をキャラクターとして作成し、空想世界を楽しむといったものです。

もちろん架空のゲーム機ですが、プレイヤーはゲーム開発者の陰謀により、ゲームの世界に閉じこめられてしまうのです。

ゲーム世界での死=現実世界での死、となってしまったデスゲーム。参加者一万人のプレイヤーの生き様を描いたこの作品は、若い世代を中心に大人気なのです。

本編は、ソードアート・オンラインの世界から既に脱出し、現行のシリーズ『アリシゼーション編』を継続しているのですが、このプログレッシブではソードアート・オンラインという100層からなるゲーム世界を一層ずつ進めていくという気の遠くなるような試みを実施しています。

現行シリーズと平行して執筆されているようですから、中々新刊がでないのですが、心待ちにしているファンは多そうです。

本編に登場しなかったエピソードやキャラクターを配し、より作り込まれた設定のなかで涙あり、恋あり、笑いあり、殺意ありの究極のエンターテインメント作品へ昇華されています。本編で作者が触れたくても触れられなかった設定がこのシリーズにはすべて詰め込まれているのでしょう。

本作は第五層。殺人ギルド、ラフィンコフィンの陰がちらつき始めるも、大手ギルドの反目を防ぐために、キリトとアスナが奮闘するストーリーです。

ライトノベルでは過去に例のない長編となりそうな気配はありますが、是が非にも書ききって頂きたいとそう思える作品です。

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『しんがり 山一證券 最後の12人』 著:清武 英利

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 この作品は97年に山一證券が破綻した際に、破綻した真の原因は何かを調査した社内の調査員たちのノンフィクションです。

 私はほとんど記憶にありませんが、当時随分大きく取り上げられたようでした。物語は、山一證券最後の12人が作成した調査報告書や当時の記録、関係者からの聞き取りによって形作られたノンフィクション。

しかしながら、ジャーナリストが執筆したためか、小説のようにまとまったものではありませんでした。

破綻に追いやられた山一證券の破綻原因を究明すべく自発的に集まった熱い社員たちのヒューマンドラマ。各人にエピソードがあり、密度の高い取材を続けられたことが伺えます。

それだけに、非常にテンポは悪いです。とある人物の見せ場を作るために、いちいち過去編のようなエピソードを刻んでいくので、冗長に感じます。そのため、時系列が混みっており、突然昔話が割り込んできたりして、リーダビリティはよろしくない。

また、ノンフィクションものだけあって、過剰な演出は抑えられており、逆に感情移入しにくい書きぶりになっているところが難点です。調査した事実の部分を、粛々と羅列していったような、そんな乾いた印象を文章から感じ取ってしまいます。

”しんがり”となった社員たちの努力と信念には驚嘆の念を感じますが、作品自体は少し残念なものでした。エピソードを詰め込みすぎた感があり、かなり蛇足な印象を受けます。
取材に基づいているので、少しでも多くのことを読者に知らせたい、という意図は伝わりますが、そのため読みにくさが勝ってしまうのでは本末転倒です。

ノンフィクション自体それほど読んだことがありませんので、このようなものなのでしょうか。

オススメ度 ☆☆

 

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『夢幻花』 著:東野 圭吾

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『夢幻花』。
見つけても決して追いかけてはいけないという謎の花の物語です。

東野圭吾の文庫版最新作が刊行されました。
いろいろな小説を読んできましたが、やっぱり東野圭吾の小説は読みやすい。本作は、宿命を背負う二人の素人探偵が『夢幻花』という謎の黄色い花を追い求めるというストーリーです。

思わせぶりなプロローグから始まり、何の変哲もない平凡な大学生の日常が、とある事件を境にサスペンス風に変化していくのは東野小説の真骨頂。

花を愛でながら余生を送っていた老人・秋山周治。正義を重んじる彼は自宅で殺害される。周治の遺体を発見した孫の梨乃は、周治が生前育てていた”黄色い花”をブログにアップロードすると、ブログに”警告”メッセージが投稿される。

梨乃は、”黄色い花”の謎を、大学院生の蒼太とともに追い求めることになるのです。

ストーリーとしては、いくつもの事件が絡み合って収束していくいつもの東野ワールド。登場人物たちの役柄や犯人の意外性は及第点、というと上から目線すぎますけど、それなりに興味深いもの。

今回のキーワードは”黄色い花”。実際にこのような花が存在したのかは知りませんけど、ともすれば都市伝説を追いかけるようなオカルティックな雰囲気は少し珍しいかも。

ストーリーは、梨乃と蒼太を主人公に置いた若者視点と、所轄の刑事・早瀬の視点で進められます。若さならではの猛進な捜査と、駆け引きを多用する老獪な捜査。二つの視点から謎を追う過程が楽しめます。

この物語のもうひとつのテーマは宿命。
50年前の”MM事件”との関係は?
”黄色い花”と蒼太の初恋の人との関係は?
読み進めていくうちに、謎が増えに増えて収拾がつくのか不安になりますが、そこは流石といったところです。

エンターテインメントとしては面白いけれど、後に何も残らないよね、という話をよく聞く東野作品。
私は面白ければいいじゃないのと思いますけどね。素直に楽しみましょう。

オススメ度 ☆☆☆

 

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『微笑む人』 著:貫井 徳郎

hohoemu


普通のミステリ小説ではないことを申し添えておきます。

本作では、プロローグから犯人の名前が明らかになっていることから、普通のフーダニットと呼ばれるミステリでないことは想像がつきますが、まさかの結末に唖然とさせられます。

本格ミステリを読みたくて、という方は御期待には添うことができないでしょう。

しかしながら、”幼い命を死に追いやった裁けない殺人”を取り扱った『乱反射』をはじめ、社会派と呼ばれる作品を多く生み出している作者ならではのミステリーがこの本にも込められているのです。

この作品は、仁藤俊実という殺人犯の半生を、作家である主人公が追うといった形で進められていきます。
仁藤は、川辺で事故に見せかけて妻子を殺害しますが、『本の置き場所がなくなったから殺した』などという常人では理解の及ばぬ供述を続け、裁判官や警察からも”真の動機”を告げるよう求められる有様の人物です。しかしながら、それが真の動機ではないと誰に判断できるのでしょうか。

仁藤という男は、頭が良く、背が高く、いつも柔和な微笑みを浮かべたいい男。トラブルに遭えば、スマートに仲裁し、まさに非の打ち所のない人物なのです。
主人公は、そんな仁藤の不可解な言動や行動に魅了され、仁藤の心情に迫るために、彼の同僚、大学の同級生、高校の同級生、生家を訪ね、次々と仁藤という男の内面を暴き出そうと試みます。

人が罪を犯すときには、何を考えているのだろうか。
人が人を殺すということは、どういう意味なのか。現行の司法システムはその点を明らかにし、罪と罰そして量刑を決定していくわけですが、作者は稀にそのような考えの当てはまらぬ異常犯罪が現代社会では起こり得るのだという主張を、この本をもってしているのです。

どこかで読みましたが、事件が報道されるときに人は犯罪の動機を知りたいと思うわけですが、それは動機を理解して「ああそれなら自分は関係ない」と安心したいからなのだと。
なるほどそれはそうかもしれません。

常人の理解が及ばないから真実ではない、というのは人の傲慢であって、自らが理解できないことのほうが世には多く蔓延っており、現代の異常な事件群もその一端であるというのが作者のメッセージとなっているのですね。

そういうメッセージ性の強い作品でありつつ、仁藤という男の人格そのものを”謎”に見立てて、物語を進めるというミステリの形式は素晴らしいものですが、残念なのはやはりラスト。

真相・真実は読者に委ねるといった形態を取り、冒頭で述べたとおり消化不良の状態で物語がまとめられてしまいます。読者に媚びた内容ではないところに潔さは感じますが、そうであればミステリーとしての広告はしないで欲しい、と思ったり思わなかったり。

作者本人にそのような意図がないにせよ、ミステリーと標榜されると”衝撃の真相”に期待を寄せてしまうのは、やむを得ないことかと思っています。兎も角、面白さにかかわらず、自明のことであればまだしも、ミステリーと銘打っておきながら真実を読み手に委ねるとする作品は、容認しづらいものがあるという話です。

オススメ度 ☆☆

ラノベ

一言感想『僕と彼女のゲーム戦争9』 著:師走 トオル

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『僕と彼女のゲーム戦争9』が刊行されているのでご紹介しましょう。

もちろんライトノベルです。本シリーズの特徴は、実在するゲームが登場するということです。本シリーズの世界観は現代を踏襲しているものの、”ゲーム”というものが一定の市民権を獲得しており、プロゲーマーやeスポーツとして一般に広く認知されているという点でしょう。

主人公は高校生。部活動を舞台にした青春系エンタメものです。
ゲーム初心者だった主人公の岸嶺が、『ゲーム上級者』とは何か?という疑問に到達するという展開です。

シリーズものにありがちではありますが、全体のストーリーの進度は遅々として進みませんから、サザエさん的世界観を持ち合わせているのかとも疑いましたが、次回作で完結するとのことですから、時間軸は進行しているようです。

肝心なゲームは、本作においては以下の実在するゲームが取り上げられています。

EVEonline。ダウンタウン熱血行進曲。EVOLVE。

EVEonlineは、SF系MMOを名乗るゲームで、25,000年後の遠い宇宙を舞台としたものです。本作では、サブレギュラーであるライバル高の面々と戦う場面で用いられました。プレイしたことはありませんが、『7000以上ある星系からなる広大な銀河で構成された世界でプレイヤーは艦船を操って飛び回り・・・(以下略)』と壮大な様子。時間泥棒確実なので、あえて触れたくありません。

ダウンタウン熱血行進曲といえば、言わずと知れた『くにお君』シリーズの名作。近年PS3版でリメイクされました。30代付近の方であればプレイしたことがあるかもしれませんね。懐かしいです。

EVOLVEに関してもプレイしたことはありません。様子を見る限りモンスターハンターのような感じのゲームです。ただし、モンスターの操作も人が行うという特徴があり、ここに戦争的な要素があるようですね。今回のストーリーでは、このゲームのプレイ中に岸嶺が『上級者とは何か』という問いに対する一つの答えを導き出すことになるのです。

どれも実に楽しそうな作品で、寝不足は請け合い。特にマルチプレイ系のゲームは危険です。20年前とはゲームの楽しみ方が変わってしまいました。ゲームボーイを持ち寄って、有線コードで繋いでいた時代もありました。

各ゲームのポイントを緻密に描写しており、プレイしたことのない人間にも想像しやすいよう計らいがあります。専門用語が多く使用されるゲームでも、邪魔にならぬ程度に解説し、読む側への配慮が伺えます。
このシリーズの見所である主人公の特殊能力。突出した集中力を発揮し、ゲームの世界へのめり込むという能力ですが、本作ではあまり出番がなく、少し物足りない感じがします。これを見るために買ったと言っても過言ではないのに。

先ほど述べたように、次巻で完結。実在ゲームを取り扱うという点においては貴重な作品でしたので非常に残念です。最終回でヒロイン候補の3人と、どのような結末を迎えるのか。ハーレム的要素も盛り込まれていたこの作品。あと一冊でどのようにまとめるつもりなのか気になるところです。