大きな会社ならブランディングに関するルールや規程、広報部門などの専門部署のプロフェッショナルが対応してくれそうなものですが、中小企業や伝統的なやり方に対する信奉の強すぎる会社では望むべくもありません。
当社も御多分に漏れず、担当者が思いつきでネーミング案を挙げてきたり、素人(言い方は悪いですが、技術専門職の方々などですね。)たちを集めて話し合いで決めてしまうという状況。ブランディングもなにもありません。この状況を打破しなければ、という方は多いのではないかと。
目次は次のとおりです。
第1部ではネーミングの捉え方ということで、ネーミングの成功事例や権利化に関する基本的事項の確認をし、第2部「ネーミング開発の進め方」では、少し具体的にネーミングを発想する方法が記述されます。
第3部「ネーミングの発想と評価の技法」では、筆者の研究成果から7つの発想・評価方法が教示されます。一番勉強になったと感じたのは本章。特に、ネーミングの評価について。
「良いネーミングは『5つの評価』でチェックする」
1.意味、視覚、音感で評価する
会社、商品、サービスの内容や意味が伝わるか、色や形が良く、見て見やすく、イメージが良いか、発音がしやすく、聞いて気持ちよく、感じが良いか、というポイント。
2.ネーミングは7文字以内が理想、長いと覚えられない
3.「見、読、書、聞、話、覚」の「6やすさ」があるか
5.「現代性・クリエイティブ・グローバル」
第4部は、ネーミングより広いブランディングの入門編です。
プロの方々もやっていることは基本的に同じです。その手順が体系化されていますし、当然品質や発想の量からしても、一企業の担当部署とは比べるべくもないといったところでしょう。
ネーミングの良し悪しが商品やサービスの売れ行きに影響する点は事実です。その点を軽視している人間が多すぎるという点が問題なのでしょう。本書では、危機感を煽りつつ、ネーミングに関する技法を実務に即して伝えている点で参考になりそうです。
新規事業開発や技術開発部門の若手、広報部門、知的財産部門、企業法務部門の担当者向けに良い教材になるように思いますし、筆者が入門書と述べていることから専門家にとっては基本中の基本なのでしょうから、外部コンサルタントに任せるにしてもこのあたりのことをどの程度知っているのかという点は、業者選びの試金石になりそうです。業者任せは一番危険ですからね。
そういうわけで、目を通しておいて損はなかろうという内容の本でした。