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『子どもの王様』 著:殊能 将之

おうさま

 殊能将之の『子どもの王様』を読みました。2013年に著者は亡くなりましたが、『ハサミ男』や『美濃牛』など、本格と呼ばれるジャンルの斜め上を行くようなスタイルで、ミステリーを執筆してきた作家のひとりです。

本書、『子どもの王様』は、そんなミステリーとはまた一味違った著者の幼い頃の実際の体験をもとに描かれたファンタジックなミステリーです。

主人公は小学生。
集団登校や放課後の遊び、ごみ出しにうるさいおばさん。実に郷愁を誘う世界観です。

まだまだ幼い少年である彼らは、小うるさいオバサンが魔女に見えたり、戦隊ヒーローに憧れたり、”リコン”の意味が今ひとつ理解できなかったりと、何だか読者の脳みそを抉るようなミステリーを描いてきた著者らしくない、物腰柔らかな読み味の物語が続いていきます。

ひときわ異彩を放つのは『子どもの王様』。
主人公の友達がおそれる、この王様は不気味な存在として描かれ、自分たちに仇なす敵としての立ち位置で終始、主人公の心を乱してゆくのです。
(読者からすれば、この「子どもの王様」がどのような存在かは一目瞭然なのですが。)

物語に登場する、”看板”を使ったトリックは流石といったところですが、物語には深く関わらない遊びのようなもの。それでも、このノスタルジックな世界観の中でも、一瞬の鋭利な輝きを感じさせるのは、著者ならではの技術です。

ワーグナーのオペラがオマージュされているようですが、私は見ていないので何とも。見ていればより深い殊能将之の世界へ潜り込むことができるのでしょうか。
・・・純粋なミステリーを楽しみたい方には、少し物足りないかもしれませんね。

オススメ度 ☆☆

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