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『握る男』 著:原 宏一


昭和56年初夏。
両国の鮨店「つかさ鮨」の敷居をまたいだ小柄な少年がいた。
抜群の「握り」の才を持つ彼の名は、徳武光一郎。その愛嬌で人気者となった彼には、稀代の策略家という顔が。鮨店の乗っ取りを成功させ、黒い手段を駆使し、外食チェーンを次々手中に収める。兄弟子の金森は、その熱に惹かれ、彼に全てを賭けることを決意する。食品業界の盲点を突き成り上がった男が、全てを捨て最後に欲したものとは。異色の食小説誕生。


二転三転するストーリー展開がとても興味深い一作でした。
原宏一氏の『握る男』です。

この本は、とある男の一生を追うドキュメンタリィテイストのエンターテインメント作品です。
ともすれば伝記のような、そんな印象さえ受けます。

主人公・金森はうだつのあがらない寿司職人見習い。
そこへ、親方の連れてきた小柄な少年が自分の弟弟子として寿司屋へ入店することになりました。
徳武光一郎。要領のいいヤツで「ゲソ」というニックネームで呼ばれて可愛がられることになります。

ゲソは、とても愛嬌があって人気者。
ゲソに任せておけば、何もかも巧いこと事が運ぶ。
不思議に思った金森は、ゲソと話してみることに。

実はこれまで起こった事件は全てゲソが起こして、ゲソが自分で解決していたのだと。
要領よくやっていかなければ、ダメっすよと諭され、金森も自分が助けてもらった立場なので強くは言えないのです。

そのうち、ゲソは「握り」に才覚を表しはじめ、”寿司”の握りだけではなく、人の”弱み”を握り、上昇志向を発揮し続けていくのです。
「半沢直樹」にも通じるところがありますが、正統なやり方ではなく、法律違反も何のその、目的を達成するためには手段を選ばない非常に危険なやり方です。

明確には描かれませんでしたが、何人も邪魔な人間を殺害しているようでもあります。
全てのビジネスマンに読んで欲しい、という帯に惹かれて購入した本作ではありましたが、これを読んだビジネスマンは「真似できるか!」と憤慨することでしょう。

細かいところはいいのですが、ゲソが一介の寿司職に見習いから、新店舗を任されて、全国チェーンへ展開していき、どんどん業容を拡大していく。
小気味良いテンポでストーリーがどんどん展開していくので、読んでいてとても楽しいです。
また、終盤日本の「食」を手中に収めつつあるゲソの凋落振りも見ごたえがあります。

そうして成功を続けていったゲソと、なんとなくゲソに付いていくも成果のあがらない金森との対比も面白いです。これが天才と一般人の違いなのか、と考えさせられるところ。

ゲソの人生がテーマなのだけれど、ミステリとしての要素も見逃せません。
なかなか奥深い作品です。

オススメ度 ☆☆☆☆

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