読書アイキャッチ

『PK』 著:伊坂 幸太郎

人は時折、勇気を試される。落下する子供を、間一髪で抱きとめた男。その姿に鼓舞された少年は、年月を経て、今度は自分が試される場面に立つ。勇気と臆病が連鎖し、絡み合って歴史は作られ、小さな決断がドミノを倒すきっかけをつくる。三つの物語を繋ぐものは何か。読み解いた先に、ある世界が浮かび上がる。

伊坂氏の文庫が発売されていたので、購入しました。

最近の著者の作品は、個人的にははずれ続きと思っています。
面白い作品もあるにはあるので、今回はどうなんでしょうね。

『PK』は、本書に収録されている全三篇の表題作です。
ちまちまとした短編集よりも、重厚な長編大作を好む私としてはこの時点で少し気分が萎えてしまっているところです。特に、伊坂氏の短編は、着想は面白いのですが、オチがゆるふわ、スッキリ終われないものが多いのです。

表題作『PK』は、日本がW杯本選出場を決めたペナルティキックを成功させた理由を探る、という不思議な物語です。

PKを成功させた選手は、試合当日終始絶不調で、キッカー優位のPKといえども、失敗しても不思議はなかった状態。家族を人質に捕られているのではないか、という妄想を垂れ流す者もいる始末です。
そんな状態で、PKを成功させたことに対して疑問を持ったとある議員が、その謎を調べ始めます。

物語にメッセージ性があり、訴えかけたいことも伝わってきますけれど、特に山場やオチもなくやはりふわっと着地する物語です。

気を取り直して、第2編『超人』です。
『超人』では、とある作家の家に防犯システムの販売員が訪れるという地味なお話です。
その販売員は、作家にとある悩みを告白します。

自分は『未来を予知できる』能力を持っている。
そして、将来人を殺そうとする人を、”殺して”回っている。
新しい”未来予知”は、とある議員を殺すことである。

『超人』の中盤あたりまで読んで、全編のストーリーが繋がっていることに気づきました(遅い。)
三つの短編が繋がって長編のような形になっているのです。

予知能力を持った彼が、とある議員を殺すことで何万人もの命が助かるけれど、超人は幼い頃に、その議員に命を助けられたことがある、という過去をもっており、その命の恩人を殺してしまうか否か、悩みに悩むという物語です。
比較的頭に入ってきやすい、分かりやすいストーリーです。
ご都合主義な感じは否めませんが。

最後に、『密使』。
時空改変系のSFです。

この作品では『私』サイドと『僕』サイドで主人公が違い、別々の物語となっています。

『私』サイドでは、時空改変を起こそうとする組織がタイムパラドックスを起こさないように時空を改変しようと企むというシナリオ。

そのためにはどうすればよいかという研究を重ね、その結果、もっとも時空にダメージを与えない方法を実行したとすれば、ただ1人その存在に影響を与えてしまう(=つまり消滅してしまう)という人物に対して、説得を図るというストーリーです。

『僕』サイドでは、握手をするたびに、相手の時間を6秒間スリ、自分のものにしてしまうというおかしな能力をもった僕の物語。
こういった突飛な発想は伊坂氏の得意とするところです。秀逸です。

『僕』サイドにも時空を改変しようとする組織があります。
こちらの組織は、『私』サイドで引き起こされる時空改変が大局的見地から見て誤った判断であることを知っています。そして、将来もっと良い方法で世界を変えていく方法があることを知り、『私』サイドの時空改変を止めようと試みます。そこで、6秒スリの能力が活きてくるわけですね。

序盤は、両サイドがどんな絡み方をしていくのかわくわくしながら読み進められました。
各作品が他の作品と繋がり、納得できるような出来ないような、曖昧な部分を残しながら展開されていきます。

前述したように個人的には、ガッチリ繋がった一編の長編作品というほうが好みですが、「不思議」「曖昧」「よく分からない」という感想を持つ作品こそが、伊坂氏の作品の特徴でもあるように感じますので、これはこれでよいのかと。

なんだかんだで新刊を買ってしまうおかしな中毒性をもった作家です。

オススメ度 ☆☆

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA


次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>